あれは何だったんだろう [生活]
とても遠い昔のことだったような気もします。幻想の中にいたのか、あるいは夢をみていたのかもしれません。
気が付くと大きな船の船室の中にいました。15畳か20畳くらいの船室の中に会社の部下5-6名の男女と一緒に乗っているようです。夜の東京湾の中を周遊しているようで、船酔いしているわけではありませんが、頭が少しくらくらしています。
同じ船室にもう一組、20代の男女5-6名がいます。相部屋なので挨拶しておこうと思い、一人で話しかけにいきました。
「こんばんは。皆さん、どういうご関係の人たちですか。」
「みんな高校の同級生なんです。」ひとりの男性が答えます。
「そうですか。みなさん、もう社会人なんですか。」
「私だけは会社に勤めていません。小説を書いています。」とひとりの女性が答えます。
「そうですか。直木賞か芥川賞を狙っているんですか。」
「はい、芥川賞です。」とのことです。
「ほおー。純文学ですね。ペンネームを聞かせてもらえますか。」
「川上弘美です。本名を使っています。」
まわりの男女が「期待の星なんです。」と教えてくれました。
気が付くと甲板のデッキに寄りかかり立っています。隣には同僚の女性も立っています。甲板は多勢の船客であふれ、派手な衣装でディキシーランド・ジャズを演奏している楽団もいます。
初夏の夜風が気持ちいいですが、現実のものとは思われません。酒に酔っているのかもしれません。遠くに小さく花火が上がっています。
「デズニーランドの花火ですね。」と隣の同僚に話しかけると、
「デズニーランドじゃないでしょ。ディズニーランドと言ってくださいよ。」と言われてしまいました。
ふと気づくと、帰りの電車の中でした。もう少しで寝過ごしてしまうところでした。